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デザインのキンドル独学の学習内容
デザインとは、絵や図を使った情報伝達
デザインとイラストとの違いは何でしょうか? もちろん、イラストは絵そのものです。ではデザインは?
デザインとは、絵や図を使った情報伝達の方法論です(英語のdesignは機械設計のような工学的意味合いを含みます。日本語のカタカナのデザインは、意匠考案の意味出使われることが多いようです。)。
パッケージ、ポスター、ジャケット、カバー、書籍表紙などの平面的な媒体はデザインの筆頭です。スマホ形状やインテリアのような立体的なデザインの場合には、見た目だけでなく実用の機能性も求められます。ソフトウェアの見た目(インターフェース)は、情報技術よりもデザインの領域です。世の中で、デザインが関わるものが溢れています。
挙げた例のどれもこれも「見た目の意味」を持たせる工夫であることに、気がつきますね。ただの絵や図ではありません。その背後にある情報や意図を伝えるための媒介なのです。
デザインにおいて「直観的」とか「親しみやすい」と形容されるものは、すべて「背後にある情報や意図がラクに把握できる」ということの現れです。
そのためには、デザインを担う人材(デザイナー)は、扱う製品・サービスの全体を把握しなければなりません。決して「図案だけを考えればいい人」などではありません。
デザイナーは、エンジニアやイラストレーターのような要素を作り込む人材と異なります。むしろ「ビジネスの中で扱われる商品そのもの」を全体としてプロデュースする役割なのです。アップルの故スティーブ・ジョブズがそうであったように。
ニーズと共感とを結ぶ
デザイナーの具体化技能の話題に入る前に、デザイナーという種類別の人材を取り巻くビジネス環境について整理しておきましょう。
ビジネスのためのデザインには(アートとは違って)、明確に目的があります。
デザインにおいては、目的がまずはじめにあって、上手に世の中に伝えるための手段として絵や図を使うのです。目的から逆算して創作する点は、工学的な設計作業(design)と共通なのです。
少し堅く表現すると、ビジネスにおける目的とは「利用者のニーズを満たすこと」です。一方で、手段とは「ニーズを満たす解決方法(ソリューション)を提供すること」です。
ニーズから解決方法を考えるのは当たり前に見えるかもしれません。しかし現実には、テックベンチャーを筆頭に、シーズから解決方法を考えようとする会社もたくさんあります。
シーズから出発すると爆発的ヒットを生み出すことがあります(例としてiPhone)。一方で、顧客ニーズが存在せず市場撤退となることも少なくありません。
さて、デザイナーの思考法をビジネスに当てはめたものを「デザイン思考」と呼びます。
デザイン思考では、課題やニーズの抽出に大きな力を注ぎます(一方で、課題ありきで解決方法の抽出に注力するのが、いわゆるコンサルタントです)。
なぜそのような思考法がビジネスに求められるのでしょうか? 時代が変わったからに他なりません。
日本も、戦後から高度成長期までは、欧米を手本として、大量生産大量消費を効率化させて経済大国の地位を確立しました。「欧米のマネをする」ことが正解だったため、同じようなものをより早く、より安くつくる能力がもとめられました。工業だけでなくサービス業も画一的でよかった時代です。
つまり、高度成長期は、「課題が多く(まだ貧しいし国内市場・需要も大きい)、解決方法は少ない(欧米の模倣をする)」という時代でした。決まった手続きに習熟した受験秀才が高く評価された時代でもあります。
ところがいまはどうでしょう? 価値観は多様化し、製造業でも多品種少量生産の高付加価値化が叫ばれるようになりました。画一的なものを早く安く量産提供しても、もはや国内需要はありません。サービス業においては「ニッチをねらえ」が合い言葉になっているほど、多様な形態にありふれています。
つまり、現代は「課題が少なく(たいていのものにすでに満足、国内需要は小さい)、解決方法は多い(さまざまな技術、手法がある)」という時代です。受験秀才よりも型破りな天才・奇才が求められるようになりました。
デザイン思考とは、いいかえれば「型破りな天才・奇才の考え方を再現するための方法論」です。もともとデザイナーはみな天才だったということでもあります。
デザイン思考の中核は、「市場・需要とは、人々が製品・サービスを使いたいと思うこと」と考えるところにあります。
高度成長期には、この「使いたい」と考える理由が、機能性(役に立つ)にもとめられました。現代では、「使いたい」の理由として共感・感性(意味がある)に求められるようになりました。
したがって、共感とニーズをどのように結びつけるかということが、現代における「市場を形成する」ということであるのです。共感に徹底的にこだわることが最重要になったのです。
デザイナーはもともと共感を刺激することを生業にしてきました。スティーブ・ジョブズのような(エンジニアではなく)デザイナーがビジネスを牽引していくことには必然性があるのです。
有名なインスタグラムのサービスも、最初の立ち上げ時にはエンジニアがおらず、デザイナーしかいなかったそうです(だからオシャレなんですが、『どうやって実現するのか?』と投資家からは冷たく扱われたそうです)。
改めて確認しておきましょう。ニーズと共通を結びつけるデザイン思考、デザイナーが、絵や図の構成技法を飛び越えて、ビジネス全体をプロデュースする。デザインを学ぶ意義はますます大きくなっています。
理論派デザイナーを目指す
メタ的には「デザイン思考はデザイナーの考え方をビジネスに当てはめたもの」と述べました。ここからは、狭義のデザイナーの素養について述べていきます。
デザイナーにも感覚派と理論派がいます。
趣味であれば感覚派でもよいですが、これからビジネスのためのリスキリングで考えるなら、理論派をめざすべきです。
ビジネスの現場では自前デザインをもっていったときに「どうしてこのデザイナーにしたのですか?」と必ずしもきかれます。このときに「なんとなく感覚でいいと思って・・・」と言ってしまうと、どんなに洗練されたデザインでも採用には至らないかもしれません。
というのも、デザイナーにデザインを発注・依頼した側の人も、デザイン案を上司や周囲にあとで見せます。そのときに合目的性や主題との一致などの理屈がもとめられます。要するに責任者として、周囲に説明をしなければなりません。そのためにはデザイナーから詳細を確認できていないと不安です。
発注者の不安をしっかり取り除けるような説明責任を果たすことが、デザイナーにもとめられます。そうでないと「このデザイナーさんは、うちの製品・サービスのことをわかってないのでは?」と思われてしまいます。ビジネスや製品・サービスのことがわからない人は、デザイナーとはみなされません。イラストレーター未満です。
つくった図案の理屈を一貫して説明できるようにするためにも、これからデザインを学ぼうという場合は、ぜひ理論派をめざしてください。
確たる基礎理論がある
「デザインの要素と原則」というものがあります。デザインの構成要素や要素同士の関係性が全体に与える影響にも、きちんとした原理があるのです。
一部を紹介します。デザインとは感覚的につくるのではなく、極めて綿密に組み立てられるものだとわかります。
- フォーマット(判形、縦横比など)を決める
- カメラアングルを決める(イラストのカメラ方向も込み)
- 紙面に(見えない)規則正しい格子を配置する
- 全体構図を決める
- 視線誘導に配置する
- 伝えたいテーマを選ぶ
- 線、色、形状、質感、空間、外形
- フォント
- 近接、併合などのグルーピング
- バランス、階層的などの全体構成
- などなど
たくさん決めないといけないうえ、一つ一つに根拠がもとめられます。デザイナー主導でイラストレーターへの仕事の依頼も必要です。
デザイン検討の内容をこうして見てみれば「図案さえ作ればいい」ということはなく、ビジネスの目的を理解していないといけないことがわかります。
感覚派のデザイナーは、こうした一つ一つを自分の経験則として身につけているのだといえます。それをうまく言語化できるかどうか(どちらかといえばライティングの能力)が問われるわけです。
理論的に分析されたデザインの原理も、もともとは人間の感覚に基づいたものです。先人の知恵を拝借しながら体系的に原則を学ぶことは、デザイン技法を短期間に身につけるための「型」になります。
感覚だけを頼りに学ぶよりも、確立された「型」をしっかり身につけるような学び方をするべきです。
かずが実際にかかわったデザイナーのなかには、美大や芸大ではなく、医療系出身のデザイナーがいました。転職を機に未経験からデザイナーになったそうです。
その医療系出身のデザイナーが言うには「デザインは結局、使いやすさとわかりやすさ。わかりやすさを高める定石みたいなものがいっぱいあって、教本で勉強すれば、何がいいか悪いかは客観的に判断できるようになります。別に美大ですぐれた手技を鍛えなくても、基礎理論をしっかり固めたり、色彩検定みたいなのを取れば、十分役立つ仕事はできます」と自信もっていました。
その基礎理論とはたとえば以下のようなものです。
- 配色(色彩・色相)
- 配置
- タイポグラフィ(フォント)
デザインの基礎理論としては、すぐれた教本がたくさん市販されています。とくに、チュートリアル形式で順を追ってつくっていくタイプの本が勉強しやすいです。
キンドル本では、ウェブデザインやソフトウェアデザインについて書かれたものが多いです。電子書籍という媒体との相性がよいからでしょう。
市販の本はイラストや写真を多用して、感覚派の人にも取っつきやすい構成です。これはこれで、絵や図の手本そのものをたくさん眺めて一定のセンスをためには役立ちます。
一方、キンドル本は活字がほとんどを占めます。つまり、しっかり理屈で言語化されています。理論派デザイナーを目指す場合のよいお手本・道標になります。ぜひ、キンドル本で理論派デザイナーのめざし方やノウハウを学んでください。
ソフトの使い方も必須
デザインソフトに習熟しているかどう基礎理論だけ詳しくても批評家にしかなれません。自分の手でデザインを生み出す技量を身につけておかなければなりません。
デザインに限らず、専門的なソフトを使いこなすとなると、一般には以下の項目がスキルとして見られます。
- どの機能まで心得ているか
- どのくらい各機能を深く理解して扱えるか
- そのソフトの実務経験
未経験であれば、ソフトで自力でポートフォリオをつくって見せられるようにしなければなりません。基礎理論の学習を進めると共に、ポートフォリオ作品の実践にどんどん取り組んでいく必要があります。
鉄板のソフトは以下のものです。動画編集のソフトもデザイナーの範疇だと思うので計算します。
- Illustrator 最重要必須ソフト
- Photoshop 写真加工(イラスト作成は別のイラストレーターに依頼することもできる)
- InDesign 雑誌など出版用途
- XD,Figma,Sketch ソフトのUI
- Maya 3DのCG
- Premire Pro YouTube動画編集
- Affter Effects 尺が短いPV用
デザインソフトの使い方については、動画チュートリアルを見ながら実際に触って、体で操作方法をおぼえていくべきです。
無料の動画でもかなりのところまで学べます。むしろ、無料動画のほうが短い時間に単元内容が詰め込まれているので、集中して学べるといえます。
有料オンラインコースはどちらかといえば長大です。消化するのが大変のうえ、「お金も払ったから全部を吸収・周回しないといけない」という脅迫観念に駆られます。
デザインを学ぶには「今知っているテクニックの範囲内でポートフォリオのアウトプットを出していく」ことが大事です。心にゆとりをもって、一つ一つを丁寧に作り込む経験を積むべきです。「お勉強」ではないので、安易に有料講座で詰め込もうとするのは得策ではありません。
キンドル独学のアウトプットの場は?
すでに述べたように、ポートフォリオをデザインソフトを使って作りつづけてきます。「自分はこれができる」とモノで示していくことが必要です。
基礎理論が「わかる」ではただの批評家にすぎません。実践者になるには「できる」という状態にはやくたどり着く努力がもとめられます。
教本や動画では通りいっぺんのHow(方法、テクニック)をまなぶことができますが、そのあとのWhat(何を)を考えるのが実は難しいのです。Whatをどうするのかは、プログラミングやイラストとも共通する悩み事だといえます。
実は題材はなんでもよいのです。たとえば、適当な小説を買ってきて読んでみたり、関連内容を少しウェブ検索して資料を集める、というのでも十分です。ドラマ化、アニメ化、映画化などの例そのものになります。
小説の例では、人物の苦悩、葛藤、背景、成功、失敗などを詳細に分析してみましよう。そして、作品のテーマ、伝えたいことが何であるのかを言語化しましょう。
抽出したテーマにあうポスターをポートフォリオとして何通りかつくってみましよう。もちろん、基礎理論に沿って、デザインソフトを使って作り込むわけです。
できあがったものはSNSで人に見せたり、共有サイトにだしたりしてみましょう。意見や感想がもらえたときに、自分の意図が不特定多数に伝わっているかを確認するのです。
SNSで自信がついてきたら、ココナラなどのスキル販売のサービスで、デザインを請け負ってみてください。スキルをお金にかえていく第一歩です。仕事をとるためには、あるていどのSNS上の評価があれば見てくれる発注者はいます。
依頼者もなんらかの目的(ブログの表紙、ツイッターのヘッダーなど)に合うものを求めています。依頼者のブログやツイッターの内容を分析してみましょう。テーマ、差別化内容などを言語化します。小説の例と同じどころか、もっとわかりやすいはずです。
依頼者の目的にあうような提案(図案)をつくりますが、仕事を確実にとるために、理論派デザイナーとして、「図案の意図の説明書き」をセットでつくりましょう。依頼者の納得感を確認しつつ、デザイナーである自分との「ズレ」も把握できます。説明書きも組み合わせて提案すれば、コンペ(入札競争)でも優位にたてます。
ここまでくると、マーケティング、ライティング、交渉術の領域になってきます。デザイナーの狭義のスキルだけではポジション取りできません。自分のビジネスとして「仕事をとる」ための周辺知識もあわせてまなんでおきましょう。
マーケティング、ライティング、交渉術は本研究所で扱う主要なテーマです。デザインを学ぶ傍ら、一緒に心得をまなんでいきましょう。
キンドル本には、「デザインの仕事をとる」という仕事術が書かれたものもあります。デザインそのものでお金をもらうことはできません。依頼者から仕事をもらって、初めてデザイナーの作業が始められます。
キンドル本では、「どうしたら仕事がとれるのか」を、「無名」のデザイナーが教えてくれます。等身大の成功パターンや失敗体験は、リスキリングとしてデザインを学ぶ人にとって、貴重な生きた情報です。ぜひキンドル本でデザイナーの仕事の全容と「型」を勝ち取ってください。
まとめ
ここに